現代、
消費されるモノの体系から
どれだけのモノが
形見の層に
昇華できるだろうか。

人の死とともに
際だつモノを
「形見」と呼ぶことも、
人格の基層に
位置づけられたモノへの
深く敬虔な洞察である。

されど、
我らが日本の文化は、
古代よりすでに
「物語る」という
言の葉を携えてきた。

モノの語りかけを
アフォーダンスと定義づけるに、
西洋の文化は2000年を要した。

とりわけ、
記憶、思い出、追憶に
寄り添うモノの
色あせない形態の創出は、
生命、人生、
いわば生と死への
尊厳への畏敬として
切り出される
かたちのイメージから
もたらされるのではないか
と想像する。

モノのデザイン、
その骨格に基層となるべき
量子構造を仕組んでいく
手続きと具体化は、
基層としてのデザイン、
というテーマになるだろう。

さらには、
モノと人間との強い相互作用が、
この基層を
かたちづけるとするなら、
そのモノに施された何が
人間に語りかけ、
何がその関係を
編年化させることになるのか。

果たして、
自分に関わる
モノの体系もまた、
基層の素材に
なりえるだろうか。

それは思い出として、
人格の基層となり、
幾重にも
積み重ねていくことが
可能である。

人間は
過ぎゆく歳月のなかで、
喜怒哀楽の出来事を
いとしみ携えることができる。