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Posts Tagged ‘街’


『貧しいモノづくり・イヤーホンで確認可能』


   


     2月 18th, 2016  Posted 12:00 AM

私はオーディオの世界に入り、しかもデザイナーになっても
デザイン対象はオーディオ機器を選びました。
これ自身、私は人生で最高の出逢いであり、
プロのデザイナーとなっていくにも素晴らしいことだったと思っています。
今ではオーディオはすべからく趣味の世界になっていますが、
音響空間は自宅から車に至るまで、
私は絶対に最高級であることを熱心に求め続けてきました。
だから、ワイフにはきびしくチェックされていますが、
ワイフ自身、自宅のHi-Fi空間になじんでいるために、
自分のイヤーホンも、結局は最高級品を知識なく選んでしまっています。
このところ、私はドイツのベンチャー企業から生まれた
電磁波を防止したヘッドホンにすっかり囚われていました。
もうヘッドホンでコレを超えるモノは無いとさえ思っていました。
そこで、インナーイヤーホンが気がかりとなり、
随分と投資もしてしまいましたが、いい加減にその結論をと考え、
その結果が、
イヤーホン自体が再生周波数帯域はどうしても18Hz~19.5KHzであり、
これを基本にして、ヘッドホンアンプ・iPhoneとのケーブル、
さらにイヤホーンケーブル、この3点がどうしても必要、
あるいはケーブルの問題は絶対にある、というのが
私の結論になりました。
オーディオ関連にしろ、電気関係でも、エンジニアが絶対的に、
どうしてもこの仕様を満足させたいということがあります。
かつて、最高の設計を実装してさらにそのスタイリングを決定することで
商品化したとき、それは大変な高額商品になりましたが、
技術的な最高峰はすんなりと受け入れられたことがあります。
イヤーホンであっても
「ただ音が鳴っている」程度の商品が蔓延しています。
音響での身体までも溶解するような「音」があるのです。
そのための機器からコードや周辺装置は選び抜く必要を私は考えます。
モノの貧しさはそのままユーザーの貧しさだと私は思っています。
この貧しさとは、決して金銭的なことではありませんが、
それこそ、知的であること、品性があること、見識が問われます。
正直、街ではイヤーホンやヘッドホンがファッションになっていますが、
なんと貧しいモノを選んでいるのかと思うことしばしばです。
同様に、
よくもまあこの様な貧しい商品化をする企業があると唖然とします。


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『新作007・ボンドカーでも確認できた曲線美』


   


     12月 22nd, 2015  Posted 12:00 AM

フランスのパリでは「非常事態宣言」を受けました。
が、「007・SPECTRE」試写会を観るために帰国。
これは外車ディーラーの主催で、
しかも新たなボンドカーが展示されました。
「007」映画シリーズは、おそらく私の生涯において、
何度も何度も見直し、しかも、シリーズのDVDまでいつでも観られる、
そんな状態にするほど大好きな映画です。
おそらく、スパイ、未来的ガジェットの武器や装備、ファッションです。
そしてなんといっても趣向を凝らしたボンドカーは、
とりわけ、工業デザイナーにとっては、たまらない魅力があります。
パリから大阪の試写会場映画館、そのデパートには、
ボンドカーが展示してあり、なんとも多くの人が写真を撮っていました。
だから、それほど近接して観ることができませんでした。
ところが、ディーラーのショップに呼び出されて行きました。
決してそういう場所には出かけないタイプの私ですが、
「じっくり、ボンドカー観られますよ」ということで、
出かけて、本当に触って全てを観て確認することができました。
007、ファッション、ボンドカー、未来的なガジェット様々は
男の夢の塊だと思っています。
正直、実は、試写会は時差ぼけもあったのか、途中で眠ってしまいました。
でも、どうせ何度でも観るからいいのですが、
今回初めてこの新作ボンドカーを専門家として、触って確認しました。
何と言っても風圧と車体曲線美の関係は側面から後部にかけての触感で、
「ああ、なるほど!」と納得することができました。
そして、SPECTRE用のこの車体デザインに活かされている曲面、
ハイライトラインから、この車種メーカーの拘りの確信を知りました。
この車体ラインを知ってから、それこそ、鉄道から車両全てで、
決して考慮されていない曲面カーブの極地を知った気がしています。
人生最期の車種はこのカーブで包まれているべきだと思いました。
私は、家具であれ、スーツであれ、靴であれ、掌中に感じ取る触感こそ、
造形美に取って不可欠と感じているだけに、この曲面カーブという性能こそ
求めきってようやく車体の機能美が、街の景観に溶け込むのだと思います。
ボンドカーによって進化してきた車のハイライトラインは
工業製品の技術表現だと思っています。


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『ふるさと福井はまだまだ恐竜の聖地になれる』


   


     9月 22nd, 2015  Posted 12:00 AM

私の記憶では勝山市北谷で、恐竜の小指発見が、
わがふるさと福井を恐竜の街にしたようです。
昔、恐竜の本物を米国の自然史博物館で観ました。
その圧倒的な巨大さがありましたが、
現在はデザインされた妙な展示で面白さが消えています。
そういう意味では、ふるさと福井駅に着くと、
正直、金沢駅の華やかさは全くなくて、
まさに田舎街ですが、「ここまで恐竜か」と驚きます。
先般も「羽二重」織物工業の青年部会指導に帰ってみると、
工事現場の看板にまで用いられ、
様々な恐竜には「フクイなんとかザウルス」まで、
どんどんと発見されているようです。
そして恐竜博物館は、ボランティア組織での運営など、
新たな博物館のあり方としては注目。
全国の小学生男の子たちには「聖地」が勝山市だそうです。
私も一時期は恐竜の名前や図鑑を一通り完読。
男の子にとっては、
とめどない古代への夢のロマンあふれる恐竜たちです。
最近では、羽毛もあったとか、まだ恐竜の実在的な色彩も不明ですが、
アルゼンチノサウルスやディプロドクスの巨大さは、
長さが30mで100tとか聞くと、これは船舶と同等の大きさに感じます。
今は自宅には唯一のティノサウルスが一頭います。
いわゆる巨大動物は象やキリンやカバ程度でも
彼らの大きさは実感できますが、
こうした恐竜たちが生きていた時代となるとそれは想像を絶します。
勝山市北谷近辺は加越国境の山々が、大長山から烏帽子岳などが、
白山山系の手前にあり、高校時代にはすべて縦走しています。
今でも白山手前への加越国境の山々はすべて名前と、
高校時代に縦走していた思い出が重なります。
この縦走訓練が、
大学時代の後立山・立山・剣岳それから針ノ木峠に出て、
そこから一気に大町駅に下ることを4年間やっていました。
私が高校時代には勝山市北谷ならば、イワナが捕れる山系でしかなく、
まさか、この勝山市が恐竜の中心地となって、
福井県が恐竜の街として、これほど私が帰省するたびに、
ここまで恐竜で語っていると思うほどですが、
プロのデザイナーとして、地方活性のシンボルとするならば、
まだまだ知恵不足なことは確かなようです。
もっともっと、「恐竜の聖地」になっていってもらいたいものです。


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『ふだん・忘れた頃に、まさか・想定外はありえない』


   


     10月 3rd, 2013  Posted 12:00 AM

「March 11.2011」を体験してしまいました。
だから、私は最期の仕事をデザイナーとして、
ふだん・万一の危機=CRISISに対してと、
まさか・想定出来る=RISKに対して、デザイン解決を求めます。
東日本震災の天災と人災で本当に私たちは学んだのでしょうか。
南海トラフは間違い無く起こるでしょう。
私たちは忘れた頃にを思い出す必要があります。
そうして、今度こそ、想定外はありえないのです。
四国、黒潮町には2分間34mの津波が予想されているのです。
幼児、児童、生徒、介護者は2分間で50m高台に逃げられません。
この想定を「忘れてはならない」のです。
私は、デザイン手法で「空中都市建設」を考えています。
黒潮町に限らず、この日本列島全体を空中都市にしたいのです。
東京オリンピック・パラリンピックまでの7年間、
ふだんを危機にまさかを考えて、即行動が私の一番のテーマです。
私はデザイナーの知恵を一杯集めたいと思っています。
この祖国、日本列島を土=つちに、土地=とちを空中に、
そして町・街=まちを創ることをやり遂げなければいけません。
まさか、忘れた頃に、少なからず想定されている所から、
デザイナーが入り込んでいくべきだとずーっと考えてきました。
膨大な同胞を失いました。
彼らのまさかを絶対忘れてはいけないのです。
となれば、ふだんをもっと強化しなければいけません。
私のデザイナー・大学人最期に、CRISISとRISKへのデザイン設計。
3.11以後から、私は「までい Project」と呼んできました。
東北弁での「までい」とは、真剣に、真面目に、
絶対に想定外などを残してはいけないのです。
デザイナーみんなの力を借りたいと考えています。


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「『までいProject』の原資確保」


   


     3月 29th, 2012  Posted 12:00 AM

3.11の復旧・復興への対策事業は被災地各地で開始。
しかし、すべてが金太郎飴的な対策案になっています。
 ●災害に強い「町づくり」
 ●経済産業の復興
 ●コミュニティの絆強化
ほとんどがこの三つであることを確認しました。
私は、根本的な解決と、
特に被災地各地からの人口流失を考えると、
「帰りたいふるさと」としての「まち」づくりが肝要と考えています。
その「まち」は、
「とち」・「つち」、そして「まち」=町と街になります。
また東北方面では
「とおり」=通りという地名や街道が多いことにも注目が必要です。
そして産業経済の復興については、
これまでの東日本がすでに産業的には厳しい状況にありました。
だから抜本的なそれぞれの町もしくは街に、
特色ある産業を創出していかなければなりません。
私が一番懸念するのは、まだ防潮堤を築こうという発想です。
今回、手抜き工事だった防潮堤がかなりありました。
さらに10m以上を想定しての防潮堤では、
海岸線の景観はすべて失ってしまいます。
「つち」と「とち」のあり方からの発想が必要だと考えてきました。
それは「人工地盤・人工岩盤・人工水盤」までを整備する、
それほどの壮大なプランづくりが必要だと思っています。
「空中都市計画」を21世紀だからこそ、日本が構築していくべきでしょう。
そして、最大の問題はその原資です。
増税してもそれは社会保険や福祉手当になるだけです。
むしろ、これまで日本では根付いてこなかった
PFI(Private Fainance Initiative)を日本流に、
そして被災地毎対応にアレンジすべきです。
そうしてPFIを制度設計化して原資獲得をしなければ、
先立つ「お金」がありません。
まして日本全体の経済が冷え込んでいる中で、
復興費の獲得などほとんど不可能です。
どうやれば、PFIとその配当を投資した個々人や
組織、企業に還元できるかを徹底的に考えつきつめるべきでしょう。
私は今日、まず「石巻市」でそのシミュレーションモデルをプレゼンして、
新たな問題点を聞き集めたいと考えています。
そして、行政からさらには住民や特に被災された人に
共感してもらえるプランづくり=デザイン戦略が
大きな役割と考えています。

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「仏・アルビの街のデモ騒動を思い出す」


   


     1月 19th, 2012  Posted 12:00 AM

失業率4.5%と聞くと思い出すことがあります。
1998年、「フランスにおける『日本年』」で、
私は公務講演として「経済と文化・デザインの役割」で
トゥールーズに行かされました。
パリからすぐにトゥールーズに飛び、連日強行な視察の連続、
スタッフがこの強行さに文句をかなり言ってくれました。
しかし、私はアルビという街で倒れて入院しましたが、
アルビのロートレック美術館・知事公舎(中世の城)・
国立鉱山大学を観ました。
ロートレック美術館では、私がデザイナーということで、
ロートレックのシルクスクリーン原版も
収蔵庫から出して触ることまでできました。
知事公舎では「デザイン貢献賞」をいただきました。
ところがパーティー晩餐会も終わり頃に、
知事公舎はデモ隊に取り囲まれて大変な騒動になりました。
屈強なガードマン二人が城の地下道を車椅子の私を運んでくれました。
そして地上に出るとなんとそこは朝市の市場に通じていました。
なるほどこれはすごい、ちょっとした冒険気分を味わいましたが、
その夜、連日の疲れで救急搬送され入院しました。
フランスの病院は看護婦さんが美人で毎朝ハグされるのですが、
症状が治まったとき、彼女たちの体臭とフケ頭髪で愕然としました。
入院しつつも途中では医師団から猛反対でしたが、
なんとしてもトゥールーズでの講演が渡仏してきた公的義務、
出来ないなら、「日本人だから切腹するんだ」と言って出かけました。
そしてなんといっても、その市民デモの凄まじかったことです。
それは「失業率が4%」という事態に対しての猛烈な抗議活動でした。
すでに、日本の就業形態は大きく変貌してしまいました。
派遣社員の拡大と完全失業率が4.5%、生活保護手当がパート収入以上です。
日本の社会就職システムは崩壊しています。
それでも日本人は、抵抗も抗議もせずに大人しい限りです。
政治が「さらなる消費税アップ」を
政策化することはとても容易いことです。
なぜなら、政治家の積極性はこの方向を選択し施行しようというだけです。
それ以前に、少なからず、
議員定数の削減と行政改革と拉致問題があります。
しかも、沖縄問題はもとより
大震災復旧とエネルギー問題も抱え込んでいます。
私は4%でのフランスのローカルな街での
デモ騒動のすさまじさを思い出します。
そんなデモ隊の街なれど、病院は素晴らしく美しい環境で、
ここなら死んでもと思いました。しかも、病院の隣が大墓地でした。

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「『きれい』にすることが『美しい』こと」


   


     5月 13th, 2011  Posted 12:00 AM

美しいかたちのデザイン。
私の職能デザイナーの大命題です。
かたち=形式・形体・形態です。
このところ製品開発から商品化まで、
やっとたどり着いた商品のかたちは、
美しくあってほしいと願いを込めてきました。
もう40年も「かたち」にこだわってきました。
そして美しいということは本当に難しいことだと悩んできました。
そこで、私の方法論は、まず、「きれい」かどうかです。
サングラスは、顔の表情をさらに綺麗にしてくれるモノだろうか。
キーボードは、打鍵している指先やユーザーにとって、
本当に、大げさに言えば「働きがい」から「生きがい」、
その周辺に存在しているかたちになっているかどうかです。
いつも説明してきたのは、「きれい」と「美しい」には
ある隔たり・近さの概念が明確に横たわっているのです。
「きれい」は形容動詞ですが、
「美しい」は形容詞です。
これを距離感覚、近さという概念で検証し直してみることです。
まず、「きれい」にしないと「美しく」はなりません。
だからまず「きれい」なサングラスを創ります。
最近は「かわいい」という形容動詞が氾濫していますが、
私はあくまでも「きれい」なサングラスです。
具体的には、いくつかの目標を立てて、
目的である顔の表情はもちろん愛用してもらえるかたちです。
キーボードは素材開発が叶った時に、
素材の鏡面がすでに綺麗でした。
問題はここから実装です。
実装という日本語そのものが美しいことばです。
米国で私はConfiguration Layoutと言っていました。
筐体や機構設計では、Configurationになり、
回路設計や回路配置では、Layoutでしたから、
Configuration Layoutがデザインの主目標と説得していました。
さらに綺麗であることの基本は清潔であることです。
キーボードはそのまま、衛生的な清潔性を実現できました。
「きれい」の基本は掃除をすることです。
それこそ、女性が綺麗になるためにお肌の手入れということです。
ところで、「かたち」ということばから、
私は「いのち」・「きもち」・「ここち」の「ち」、
この語源から、さらに拡大することばに注視し集めてきました。
「まち」=町・街や「とち」=土地などがあります。
ともかく、今回の被災地は片付けや掃除や除染をして、
「きれい」にすることから始めなければなりません。
新しい「まち」を「きれい」にしてから、
それが必ず「美しいまちづくり」になるはずです。

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