kazuo kawasaki's official blog

Posts Tagged ‘カーブ曲線常数’


『直線を徹底するために「曲線」を身体化してきた』


   


     2月 8th, 2014  Posted 12:00 AM

私の作品は「直線的」だと言われていました。
その指摘や批評を素直に受け入れ、直線と私の関係は自由でした。
「Illustrator88」が登場する前に、コンピュータと曲線の関係は
βスプラインであり、以後、ベジェ曲線になりましたが、
パソコンでの曲線理解よりも、私のデザイン実務では、
メガネフレームの曲線は、手先のデッサン能力が必然でした。
だから、直線で工業デザイン活動の実務の方が困難だったのです。
なぜなら、あたかも直線処理は生産システムでは、
「抜き勾配」では表現不可能になってしまいます。
ところが、メガネフレームを直線で描けば、
決して顔ラインには馴染むどころか表情を破壊してしまうのです。
もう30余年も関わっているメガネフレームのデザインの線表示では
私は決して直線を選択しないことを理念にしています。
新品の鉛筆で自然に腕を動かして、そのスピードを高速に、
曲線を描く練習は欠かせません。
なぜなら、自分に身体化した曲線の度量衡を熟知すべきです。
私は自分の描く曲線のR常数を知り尽くしたいのです。
だから曲線を描くデザインツールでは「鉄道カーブ」を使います。
随分前に、日本刀のカーブ常数が大手の車企業のデザイン部には、
揃えてあるという話をその部門のトップ達から聞きました。
彼らも気づいていたのは日本刀のカーブの美しさでした。
私自身もキッチンナイフのカーブを産地の次世代に伝えています。
なぜなら、このカーブ曲線常数にきづいていない包丁があります。
そのような刃物と人間との行為は結びつかないはずだと思います。
この鉄道カーブは昔はトルエンで汚れを取っていました。
トルエンはもう手に入れることはできませんが、
マニキュア落とし液が今は最高です。
これこそ、曲線と身体とデザイン実務の必需的な関係性だと、
私は勝手に決めて満足しています。

【ブログの関連記事】
「シルエットを決定づけるモノ、それはハイヒール」
「ヘルベチカは文字の結論になっている」
「点・線・面から立体への数理造形 9」


目次を見る