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「ブランド の表現統一には、センスと見識あるディレクターが必然」


   


     9月 29th, 2012  Posted 12:00 AM

このブランドのグラフィックス表現力は一流です。
パリ本店で、一枚のシャツを見つけました。
私の大好きなクロッキータッチの素描画が描かれているシャツでした。
美大入学当時は、クロッキーは相当に鍛えられました。
だからたまらなく私の物欲に直線的に飛び込んできました。
そのシャツの素描画が、バッグの内面ファブリックにも使われました。
そのバッグは
英国鞄ブランドのグローブ・トロッターとのコラボ商品であり、
「ヴァルカン・ファイバー」と呼ばれる
伝統的な紙を多重層にした素材を
さらにこのブランド用に協同開発されたモノでした。
軽量さは格段に改良されていました。
そのバッグの内装生地にはシャツと同柄の素描が描かれていました。
もちろん、シャツと裏地は別生地でしたが、その接着あるいは圧着技術は、
このファイバー素材を見事に活かしていました。
このブランド組織においても、
シャツ部門とバッグ部門は異なっているはずです。
だから、ディレクターの存在を感じます。
このコラボ的な商品開発において、
自社ブランドのクロッキー描画グラフィックスを選んだことです。
つまり、ブランドは、モノづくりの根本的な理念を表現するには、
「何が、そのブランド表現の核心なのか」は、合議制ではありえず、
「一人の決定者」が必要だということです。
国内企業では、センス無き経営者の趣味趣向が優先され、
価値観は「好き・嫌い」だけでしかなく、
デザインを「たかがデザイン」としか見ていない経営者が
本当に日本は増殖し過ぎました。
エンジニア出身であろうが営業経験者であろうが、
その人の「ファッション性」を見るだけで、野暮ったい経営者が、
デザイン=ブランドの核心の決定者であっては企業は衰退するだけです。
私は、このバッグとシャツのグラフィックスの素描画を統一し、
このブランドが「馬具製造からのメーカー」であったことを
さりげなく表現する決定をしたことに注目しています。
日本のメーカーが「ブランド化」するには、
まず、経営者のデザインセンスそのものが大問題だと指摘しておきます。


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