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「布=『ふ』への七つのことばと割り出し線」


   


     1月 28th, 2012  Posted 12:00 AM

ふるさと福井へは56豪雪の時に帰りました。
毎日熱が出て、やはりもう東京でも生きられず、
ふるさとで終わるのかと思っていました。
しかし、春になって東尋坊周辺にはアザミやキンポウゲが咲き、
アザミの色、キンポウゲの色を見つめて、
そうだ、久しぶりに「色」を見たと思ったものです。
東京時代にすっかり忘れていた自然の色でした。
それから越前打刃物と越前和紙に出会っていくのです。
その頃は、絹織物をともかく触っていました。
理由は、祖先が描いた絵図面にまるで絹織物のような和紙があったのです。
やがて、越前和紙の産地にその復元をお願いすることになるのです。
そして布の歴史から見れば、絹織物というのはとても若い繊維であり、
その手触り感覚がなんともいえません。
そして調べていくと、
布には次のような感性的な評価の言葉が七つありました。

  • しなやかさ
  • きしみ
  • ふくらみ
  • しゃり
  • こし
  • はり
  • ぬめり

しかも、この図面は「割り出し図」であって、
宮大工技法の基本のような図面、
さらに和紙は絹のような「しなやかさ」と「ぬめり」がありました。
したがって、墨のラインがにじんでいないのです。
その秘密がこの絹のような和紙にはありました。
そうして、この七つの言葉は
ファッション素材を表現するのには最も適した用語であり、
すっかり忘れられていました。
またこの図面にはいわゆる黄金比や白銀比が描かれていました。
ひょっとするとこの図面は
私が描いていたのではとすら思うことがしばしば起こりました。
この「ことば」と「比率の割り出し図」は、
私のデザイン設計要素になっていきました。
しかも、図面が描かれた和紙は、もう越前和紙産地では、
決して漉き出し出来ない泥に含まれた水が使われていること。
そして、ある伝説に出会います。


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