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『資本主義からの逃走』
    「美しい『花』と『花』の美しさ問題の構造から」


   


     7月 14th, 2010  Posted 12:00 AM

美しい花・花の美しさ
文芸評論家だった小林秀雄の著作は、
私の世代にとって大学入学試験問題に多用されました。
そのためにいくつかの著作を読んだことがありますが、
私は、彼の視座に、当時は同意できなかったと思っています。
特に、「身震いするほどの感動」とかという文章では、
彼のような想いがするのだろうかといつも感じていたように思います。
したがって、彼の有名な一節に、
『美しい「花」がある。「花」の美しさというものはない。』というのがあります。
これは、ロダンの言葉、自然を花とした引用であり、
プラトン的思考や観念的美学の否定など、様々な解釈があります。
この一節への解釈論はいくつか自分の感覚で読んできた経験があります。
そして、私自身が、この一節とは多分生涯対峙していくことになるとさえも思っています。
言い換えると、
『美しい「デザイン」がある。「デザイン」の美しさというものはない。』
もう一つ、言い換えると、
美しい「資本」がある。「資本」の美しさというものはない。
しかし、この言い換えが、
直喩性どころか隠喩性も成立しないことは、
一点において明確です。
それは、「花」は自然物であり、
「デザイン」も「資本」も人工物ということです。
つまり、美しいデザインをする、というデザイン営為は、
「デザイン」の美しさというものを目指すからです。
そして、もっと明確になるのは、
「美しい『デザイン』がある」、ことと、
「『デザイン』の美しさ」、ということを、
デザインは目指すことができるということです。
この論点こそ、
実は、デザインの目標・目的であり、
なおかつ、デザインが付加価値と言われ続けてきたことへの大誤謬、
そのことを解決する「デザイン美」のあり方を考察することができます。
決して、デザインは、デザインの本質である美が「付加」された価値ではない、
ということを導き出してくれると、私は確信しています。


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