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Posts Tagged ‘日常会話語’


「謝罪という行為」


   


     8月 20th, 2011  Posted 12:46 AM

「すみません」
「申し訳ありません」
「ご迷惑をおかけしました」
「許してください」
「ごめんなさい」
「お詫び申し上げます」
ほぼ、謝罪の日常会話常識語です。
反して、絶対に謝らない、ということもあるでしょう。
さて、この日常会話語=パロールは、
マニュアル化された言葉になっています。
サービス産業の重要語だと考えられます。
東芝社員だった頃、
クレーム処理を命ぜられました。
「オーディオラックの棚板が破損し指を骨折」、
デザイン設計者として、営業対策費を持って、
ある地方の小さな街に一日出張させられました。
東芝での商品安全基準は当時も大変に厳しくて、
「そんな訳はない、なぜ、そして面倒くさいなー」、
それが若いときの生意気さで一杯でした。
被害者という所にでかけると、
そこはいわゆるヤーサンでした。
オーディオラックには、それはもう常識を逸したモノが
これでもかと積み上げられていました。
(馬鹿じゃないの、こんなこと普通人やるわけないよ)
両手の指先が包帯で巻かれていました。
「お前さんかい、この設計者は」
「ハイ、そうですが、これは常識はずれでしょ」
いきなり、私から攻撃=口撃開始です。
「なにぃー」・・・(きましたね、やりますか)・・・
(いざとなれば、警察へ行けば成就する)と確信。
それから、しっかりと説得(略します)をしていたら、
彼は包帯を外して、
「今夜泊まってくか」ということになりました。
一泊してそのまま出社し報告書を書いた思い出です。
謝るべきではないこと、
謝るならば、どこまで真剣に非を認めるか、です。
サービス産業でマニュアル化された謝罪には、
時には、怒り=感情的にならざるをえません。
そして、国家の政治的謝罪問題に通じます。
ここからは、相当な政治的発言になりますが、
今夜それだけのエネルギーはありません。
結局、私自身、「デザイン瑕疵と謝罪」、
「サービス」という歴史的コンテクストから、
あらためて「サービス産業での謝罪用語」、
これは徹底的に見つめ直すことが必要でしょう。
この謝罪問題は、今回の大震災・原発事故から、
「死刑廃止論」にまでつながっています。
これは徹底して、「謝罪」という哲学理念が必要です。

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「天災人災で知った語彙からかたちを」


   


     4月 12th, 2011  Posted 12:00 AM

なぜ、人は言葉を・・・、
文化人類学が教えてくれています。
人間は、毒のある物と、
役に立つ物に名前、つまり言葉を持ちました。
結局、人間は生きることと、さらに生き延びるために、
言葉を創り持つようになったということです。
そして、このような言葉の意味を知っていることが、
知識であり、日常生活では常識になっていったのでしょう。
私たちは今度の天災と人災で「識らなかった」言葉を知りました。
天災と人災で知り得た言葉=語彙は、身を守るための言葉でした。
正直なところ「知りたくなかった言葉」ばかりだったはずです。
大震災と大津波という自然の脅威に潜んでいた言葉は、
私たちが普段の日常生活では忘れていた言葉でした。
さらに、原子力発電所の事故では、
専門用語や放射能の意味まで知らなければ、
自分の「安全」を確保することができません。
人間が言葉を知る基本であった言葉でしょう。
まさしく、「毒=死」を予想するために知っておくべき言葉でした。
こうした言葉は語彙として日常会話語になってしまいました。
この日常会話語になってくれたことには大きな意味がありますが、
それは不幸な出来事の連続を背負い込んだにすぎません。
「予想外」とか、放射能を表示する単位語彙は、
科学者や技術者の言葉です。
私自身、デザインには様々な専門領域から言葉を移入します。
それが、専門的な術語、さらには原意から言葉変遷を追いかけて、
「言葉をことばとすること」で「かたち」との相対化が目標です。
「かたち」への相対化というひとつが「造形」です。
「造形」することと
「造形言語化」することが、デザイン実務です。
しかし、造形言語化は、結局、言葉であり、ことばとしても、
これらの語彙は、読まなければ理解できません。
したがって、デザイン手法によれば、
言葉→ことば→sign→図や記号=ピクトグラムにしていくこと、
これが目標であり目的、
すなわち、言語・語彙を突き動かします=do+signです。
designされた造形なら、「触ることができます」。
見て分かる「I see」できますということで、日常的な理解、
結局、納得してもらうことができると確信しています。
do+sign=designareという遡及こそ、designの原意だからです。
願わくば、すべからく「想定内」で分かっていることが重要です。

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