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『「里山」テーマのアマチュア写真・小さな展示』


   


     6月 10th, 2014  Posted 12:00 AM

大阪大学医学部附属病院の廊下には、小さな展示があります。
時折、私はしみじみと見入ることがあります。
小学生の絵画だったり、中学性のポスターなどには、現代っ子の
色彩感覚が見事に表れていることが多くて、面白いのです。
かつて、小学生の絵画コンクールで審査委員をしていたときには、
描かれた絵画には大きな特徴がありました。
入賞作品は、決まって、街の子ではなくて山奥や海岸の村でした。
それは街ほど、想像力の欠如や色彩にTVの影響が大きかったのです。
もう一つは、暗い表現を描いた子たちの父母は離婚家庭だったり、
絵画表現に、そのまま子ども達の環境が表れていたことです。
病院の廊下には「里山」をテーマにしたアマチュア写真です。
それぞれにテーマがありました。
忘れていた自然、生命の始まる場、護り抜く自然など、
今では、里山に住めなくなった動物たちが街に出てきます。
だから、人間と動物が共生できる山=里山で感じる写真でした。
山林関係地方の行政長賞や、里山賞などがありました。
名古屋市立大学時代には、「里山」関連の学会がありました。
その学会の主要メンバーの名前には、岡、山、村、森など、
まさしく里山を印象づける名字が余りに多くて、その研究内容や
川崎という名前では入会できないのかと学会誌が興味深く、
そして、なんだか嬉しく一人ほくそ笑んでいたことが思い出です。
廊下にあるこのささやかな展示は、
デザイナーとしてはもっと展示方法をとか考えてしまいますが、
入院患者さんや病院内の人がこれまでになく沢山見ていました。
こうした情景を見ると、きっと、みんながどこかで里山、
その大切さを胸の内に抱いていることがわかります。
それは、日本人ならおそらくほとんどの人が、
アマチュア写真でつたない展示であっても心が動いていたのだと
私はしっかりと受け止めることができました。


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