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Posts Tagged ‘iPad Pro’


『運筆練習に最適な学習ノートの充実ぶりに感嘆』


   


     3月 7th, 2017  Posted 12:00 AM

日本人で本当に良かったと思います。
なんとか幼稚園で教えられたわけではありませんと断っておきます。
日本人でいいと思うのは「書」の世界、いわゆる書道というか、
「運筆」というすこぶる大事な訓練があるということです。
これは岡倉天心が東京美術学校で
横山大観はじめこの訓練が基本中の基本でした。
私が美大でこの運筆は「デザインストローク」であり、
これは米国でもデザイナー職能のトレーニングでした。
先般、同期会でもデザインストロークでのデッサン、
それは生きている鶏を二人が1羽を1週間描いた苦労から、
そこから鶏をテーマにした平面から立体までの
造形訓練は一番のトレーニングだったと意気投合しました。
これを「スタイライゼーション」というのは想像力拡大訓練です。
この運筆やデザインストロークは私には身体化しているのでしょう。
特に今は書のための運筆は写経や手紙を書くためと
もう一つはiPad Pro大小それぞれとそのペンをいくつか選んでいます。
今、運筆は空海を手本にしながら、自分流の草書を求めていますが、
もはや草書ではほとんど手紙文は読まれないのです。
それ故に、空海の行書から
草書でほぼ行書からのくずし字が美しいと思います。
今はともかく美しいモノと言われれば、空海の書をあげるでしょう。
したがって、この運筆訓練には
小学生の使う学習ノートが最適だと選びました。
そこで、学習ノート「ジャポニカ」を初めてじっくりと見ましたが、
学習ノートの充実ぶりに感嘆したほどです。
そこで、一冊を持っていたら、年配の婦人から声をかけられました。
「ぼく、それ欲しいの、お母さんはどこ?」と。
車椅子に乗っているので大きな勘違いをうけたのですが、
面倒だから、ワイフを指さしたら、
わざわざ、その婦人はワイフに
「お母さん、あそこで(私が)呼んでいるよ」とのことでした。
無論、ワイフは私に、「なんで私があなたのお母さんなの」と。
すこぶる面白い買い物をしました。
今、私の書の運筆は、そうした練習図書もありますが、
「ジャポニカ」は最適だと思っています。

* 『盟友のエッセイから思い出した=スタイライゼーション』
* 「資本主義から離脱してきたデザイン」
* 『毛筆も万年筆も細軸だから可能になる運筆がある』
* 『工業デザイン教育での「手」のトレーニング』
* 『美しい運筆を体現すれば美しさがわかりそうだ』


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『iPad ProとApple Pencilで臨書が出来る』


   


     9月 5th, 2016  Posted 12:00 AM

出来るだけ毛筆で手紙を書きたいと
思っています。
そして、今ではなるべくiPad ProとApple Pencilで、
その練習、臨書もしながら可能になってきました。
Apple Pencilでの練習も、毛筆をグリップするように
垂直に立てて行うということに気づきました。
もう一つは、手紙には季節に相応しい詩を選びます。
夏は中原中也でしたが、
島崎藤村には秋にまつわる詩が多くて、
しかもできる限り、その一節、三行ぐらいがとても綺麗だと思っています。
これは、「秋に隠れて」という初恋の詩ですが、
島崎藤村の詩はとても日本語の語調と文体が美しいと思います。
初恋という「戀」という漢字がときめいて美しいと思います。
島崎藤村の詩には決まって花が登場することも、
文体や調べを美しくしているのかもしれません。
毛筆であれば、硯石に向かって墨をすりますが、
iPad Proのアプリでは紙を選ぶことが可能です。
しかし、紙のバーチャル的な存在はあまり好ましくはありません。
それでも、簡単簡潔に練習、デジタル臨書ができるのはこの時代だからです。
かつて、まだApple Plusの時代にサンフランシスコのMacWorldに、
(記憶は定かではありませんが)
日本から唯一の日本の企業がブースを出していました。
まだMacも白黒の時代でしたが日本人としてなんだかとても嬉しく思いました。
演算星組の「Mac書道」というソフト。
すでにMacでは書道が可能になっていました。

* 『毛筆も万年筆も細軸だから可能になる運筆がある』
* 『書き忘れていた手紙に取り組むという癒やし』
* 「手紙、そして私自身の肉筆は大事」
* 「『きれい』にすることが『美しい』こと」
* 『書の手本は王羲之と藤原行成を選びます』


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『毛筆も万年筆も細軸だから可能になる運筆がある』


   


     8月 25th, 2016  Posted 12:00 AM

今、自分が細字とそのためのペン・筆はこれだ、というのがあります。
そして、紙だけではなくてiPad Proでの「書」で、
訓練をしているのがApple Pencilです。
筆と言っても、これはいわゆる面相筆ですが、
この毛筆の長さ一杯を使えば、中文字=Mまでも可能です。
これで自分は手紙を書いています。
宛先も毛筆で書くことが可能なほどですが、直径は4.5mm程度です。
万年筆はおそらくこれより細字=EEFといってもいいほど、
0.03という文字であり、システム手帳や日記帳も可能です。
面倒なのはインク切れになると、これ用のカートリッジに
インクはシリンジでしか入れることができません。
この万年筆も毛筆も軸は5mmもありませんから、
絶対にトレーニングが必要だと思っています。
通常のペン軸は、人間工学的には14mmで、
Apple Pencilは鉛筆の太さを意識したデザインになっていますが、
毛筆での漢字やアラビア文字には不適合だと指摘することができます。
したがって、カリグラフィーを意識したペンにはなっていません。
東京美術学校を創設した岡倉天心は
横山大観などへの訓練では「運筆」が基本でした。
この運筆は美大時代に徹底的に教えられたデザインストローク。
当時のトレーニングでは丸ペン・烏口を使っていました。
美大卒業間際にロットリングが登場して0.6mmと0.3mmだけが可能でした。
今では、0.03mm〜0.01までがすでに出来上がってきています。
スティーブジョップスがデザイン優先であった基本は、
カリグラフィーの素養があったからに他なりません。
運筆はデザイナーにとってはデザインストロークですが、
これでレタリングがセリフ体とサンセリフ体は、
定規なしで描き出すことが基本でした。
アルファベットでもスクリプト体になれば、毛筆になりますが、
今はパソコンで簡単に済ませている下手くそな文字やロゴタイプばかりです。
文字間隔にカーニングはとてもいい加減だということです。
書くことと描くことのためには、細字は毛筆では垂直にもちますから、
Apple Pencilも垂直持つことで、実際的にPad上での書が書けます。

* 『硯箱を整理しながら・・・』
* 「手を頭脳化するトレーニング=デザインストローク」
* 「スタイラスペンは、まだまだ進化が必要」
* 「ビジュアルC.I.ロゴタイプの基本はレタリング技能」
* 「デザイン基礎力の一つから現代社名ロゴをみると」


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『イラスト・漫画はデザインスケッチでは無い』


   


     3月 22nd, 2016  Posted 12:00 AM

デザイナーにとってスケッチは明らかに一つの技能であり技術です。
ただし、僕は恩師・故柳宗理先生からは、
「レンダリングなんぞ上手くなるな」と教えられましたが、
僕はいつも反抗していました。
「レンダリングが描けないと企業入社は出来ない」と
たてついていましたし、実際はクラス(工業デザイン専攻)の中では
基本的な入試でのデッサン力も無くておそらく最低の下手くそでした。
だから社会人になって、レンダリングが上手くなることは
僕には義務でした。
実際、フリーランスデザイナーになってからも、
デザインスケッチとラフレンダリング、レンダリング技能を
日課として
自分精進の大きな目標でした。
それからパソコンの登場では、Macintosh 128kに、デザイナーの未来、
つまり、MacPaintとMacDrawに将来のデザイナー技能が見えてきました。
多分FullPaintで僕自身がトレーニングをして描いたのが
パソコンでのレンダリング、その最初のものだったと考えています。
今では、iPad Proで、かなり描ける時代になりましたが、
パソコン、EWSでのレンダリングソフトは全て追いかけてきたと思います。
しかし、最近はデザイナーがスケッチ技法での大きな間違いがあります。
簡単に言ってしまえば、
デザイナーにとってのスケッチ、それからレンダリングというのは、
あくまでもデザインスケッチであり、
その基本はデッサンでも「デザインストローク」での訓練が必須です。
それは、いわゆるイラスト描法でも、まして漫画描法でもありません。
なぜ、イラストや漫画では「デザインスケッチ」にはならないかを
書き残しておきたいと考えます。
すこぶる簡単です。
イラストにしても漫画にしても、そうした描画、特に漫画には
画枠があるのです。
つまり、画枠内でのイラストや漫画では、デザインの根本である
「発想の限界」を与えてしまうのです。
発想に限界を絶対に与えない手法である技能=技術がデザインスケッチでは
必ず求められなければなりません。
私はたとえばモレスキンにしても蛇腹の「ジャパニーズスタイル」を使い、
パソコンやiPadであれば、画面を相当に大きく拡大して使います。
デザインスケッチでは、
決して限界を与える画材や手法は使うべきではありません。
レンダリングを全否定していた故柳宗理先生には
描画に与えられる画枠からの解放を教示されていたのです。


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