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『英国のPDE国家資格にまで連続したハイバックチェア』


   


     11月 2nd, 2017  Posted 12:00 AM

英国にはPDEという国家資格があります。
それはグラスゴー大学とグラスゴー美術学校でスタートしました。
PDE(Product Design Engineering)であり、修士号資格。
これは大学で技術を学び、美術学校でデザイン。その逆もあります。
要は、デザインと技術を共に学んだというデザイナーの称号です。
これを創りあげるために、名古屋に在住していた教授がいました。
そのグラスゴー美術学校は、チャールズ・レイニー・マッキントシュ
(Chales Rennie Mackntosh)を記念した学校です。
マッキントシュの作品では、このハイバックチェアには、
いわゆるデザイン史におけるアーツアンドクラフト運動と
本来は日本発のアールヌーヴォーが彼の椅子に息づいています。
そして、見詰め直してほしいことがあります。
写真両サイドのハイバックチェアは、アールヌーヴォー、いわゆる加飾性。
この加飾性は、室内調度の決定因です。
したがって、室内との調和性が最も問われている作品です。
ところが、中央のシンプルさはマッキントッシュの名作になっているのです。
理由は、空間での存在性だけではなくて、
空間の質を椅子存在が決定づけていることです。
いわば、座るという行為に対応するよりも、
空間質を決定づけていることによって、
自宅でも室内そのもののいわゆる質量までを制御しているということであり、
世界の名作椅子のほとんどは、室内での使い勝手よりも、
室内そのものを演出する象徴的な存在の決定因になっていることです。
結局世界の名作椅子は10点であれ、50点であれそれこそ100点選別しても、
バウハウス時代やシェーカー教徒、アジア:中国の禅所乗物、
ソクタツやテンスからは逃れることができません。
もはや、人間工学で椅子は絶対に語れないことに気づくべきでしょう。
最大の理由は、
使い勝手よりも結局は空間質の決定因が求められているということです。
おそらく、恩師・柳宗理のバタフライスツール、
倉俣史郎のハイ・ハウ・ザムーン、内田繁のセプテンバーを
デザイナーの私はやはり追い抜ける椅子デザインをしなければなりません。

* 『イスと空間、空間の質量を自在化するデザイン』
* 『歴史的作品からの刺激をどう受け止めるか』
* 「『闇に座す』=土・立、修辞学的な造形の込めた願い」
* 『理念という思想からの発明がデザイン造形を決定する』
* 「誤謬へのシンボライゼーションプロトタイプ」


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『資本主義からの逃走』
「『工業デザイン』と『デザイン工学』の大きな差異」


   


     10月 26th, 2010  Posted 12:00 AM

「デザイン工学」
私は「工業デザイン専攻」の卒業です。
「工業デザイン」は言葉となっていますが、
「デザイン工業」はありません。
変わって、「デザイン工学」という言葉は生まれています。
「工学デザイン」は日本語には見あたりません。Product Design Engineeringはあります。
「工業デザイン」はインダストリアルデザインを意味。元来は産業デザインでした。
今、工業デザインは、インダストリアルデザイン・プロダクトデザインまでを包含しています。
NHKでは、「工業デザイン」という領域がアナウンス用語になっていて、
インダストリアルデザイン・プロダクトデザインは使われません。
そこで、「工業デザイン」と「デザイン工学」とを比較すれば、
当然、これには大きな差異性があります。
「デザイン理工学」と「デザイン医工学」
「デザイン工学」に、工業デザイン・インダストリアルデザイン・プロダクトデザイン、
さらには建築デザインから新たな工学的な専門領域も含まれた言葉になっています。
私は、「デザイン工学」は領域設定があまりにも広大になるので、
「デザイン理工学」と「デザイン医工学」に分別しています。
さらに、「デザイン工学」をもっと拡大して、
「デザイン文理学」と「デザイン政経学」、
さらには「デザイン数理学」などや「デザインロボティックス」などの範疇も提案しています。
「デザイン」(動詞)+「情報」(名詞)
「デザイン」(動詞)+「情報」(名詞)というのは、
デザインする対象領域の「情報」に対して、
対象と実務営為を詳細化することと学際化を意図している言葉だと私は判断しています。
「環境デザイン」は「デザイン環境」にはまだ至らず、
「映像デザイン」が「デザイン映像」にはまだなりえていません。
同様に、「メディアデザイン」が「デザインメディア」にはなっていませんが、
環境や映像やメディアがすべて「デザイン工学」に包含されていると考えることもできます。
けれども、わたしは、あらためて「デザイン●●」を、
デザイン実務を詳細化・綿密化・統合化・学際化する呼称になりうると主張しています。


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