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『ディスクールはアンドロイドロボットで消滅させられた』


   


     1月 19th, 2016  Posted 12:00 AM

昨年は「ロラン・バルトの生誕100年」でした。
ロラン・バルトは構造主義者として、ディスクール=言語表現、
つまり、書かれたことや言われたことの概念提唱者でした。
生誕100周年記念として、まさに、ディスクールのパターンを
スカーフにした表現はディスクールのデザインでした。
そのパターンの原書が「恋愛のディスクール・断章」そのままのモノ。
僕は読み直しましたが、生誕100年にして、
ディスクールでの抱擁は見事に破壊されていました。
それは、アンドロイドロボットの出現でした。
アンドロイドロボットは、「なぜ、人間は人間であるか」という
この難問解決のデザインだったからです。
単純なアンドロイドロボットとして「ハグビー」があります。
日本人は抱擁し合うことは照れ(若者には無くなりつつある)が残りますが、
フランス人からは、メールの最後にWarmest hugsと書いてきます。
結局、恋愛はすべての小説の最大テーマであったと言えます。
それこそ、日本最古の小説・源氏物語さえそうであったのです。
しかし、無論、恋愛には言葉・言語が本当は要らないように、
恋愛の言語化構造は
ハグすることで一遍に改めての意味が溶解し消滅します。
つまり人間にとって恋愛は一瞬の熱病=これは僕の私見ですが、
その熱病は感染して起こるのか、感染しているから熱病=恋愛でしょうか、
まさに生誕100年目に断章された結果は「ハグビー」というロボット、
つまり言語(ことば)では無くて形態(かたち)によって、
結論が明らかになってしまったことです。
これは言語の脆弱性を形態=ロボットが消滅させたことになります。
なぜか人間は抱擁されることで
コミュニケーションの新鮮度が増加されます。
人工物アンドロイド・ハグビーを抱き合うことが、
あの熱病=恋愛のごとくコミュニケーションを強めてしまうのです。
喋りまくる子供たちはハグビーを抱きしめれば、集中力を持ち、
アルツハイマーの老人の孤独感を消化してしまい、
断絶した者同士が、見知らぬ者同士が饒舌に会話しあうということです。
しかし、恋愛のディスクール・断章はロラン・バルトの生涯のテーマ、
その一部分に過ぎませんでした。
それはアンドロイドロボット・ハグビーに
「作者の死」をつきつけています。
ディスクールの作者が、彼の死に言説化を求めたように、
アンドロイドの創作者は、
どのようにその死と立ち向かうのでしょうか、ということ、
その指定出が起こってしまったということです。


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『若手デザイナーの海外個展を応援する』


   


     11月 9th, 2015  Posted 12:00 AM

私が自分のデザイン活動をようやくニューヨークで
発表したのは30代中頃でした。
それは、いつか、海外で発表をと思っていた時期に、
米国のギャラリーからも誘いをいただきましたが
資金もなくて1年間待ってもらった経験があります。
そしてニューヨークでの個展から、
ようやく私も海外での仕事ができるようになりました。
日本がバブル経済で東京が浮かれているのを私は見ていて、
何か、変だと思っていたときは、
Apple本社でいくつかのコードネームでデザイン提案をしていました。
だから、最近は、次世代デザイナーの一部の
海外での活躍ぶりには目を見張るものがあります。
しかし、海外での日本人デザイナーの仕事は、
明確にはっきりとしつつあることが起こっています。
海外でのアドバンスデザイン展でのプロトタイプをコピーし
まさに盗作。
この情報も私には届いていますが、
先般の盗作問題もあり、
私はこうしたことが一般化することを反対しています。
これは正当な海外進出ではありませんから、
やがて国際問題にならないことを願いますし、
この事実は黙秘せざるをえません。
しかも海外評判を国内に逆輸入しているデザイナーには呆れます。
それを助長しているマスコミには大きな疑問があります。
国内の雑誌などで、いかにも国際的活動だという取材を見ると
残念でなりません。
しかし、このところインテリアデザインを主体に活躍している
Yasumichi Morita氏が、今度はインテリアを超えて、
写真家として、しかも写真表現そのものを
モノづくりに向けて、パリで発表することを以前から聞いていました。
丁度、パリには行こうと考えていた時期と重なり、
その個展を見にいくつもりです。
欧州には、教え子たちが何人かいます。
フランスにはインターン生だったフランス人もおり、
彼の仕事ぶりが心配なので会ってこようと考えています。
また、教え子たちでも車関係・カーデザイナーを目指す子は
企業留学しています。
私の時代、何も分からずに米国から出発しましたが、
最近は、なんとか次世代のデザイナーに
私に出来ることはないかということを自分に求めています。
なにしろ、最近は海外を目指す若者が減少しているだけに
そのことが不思議でたまりません。
Yasumichi Morita氏の国内外の仕事は、かえって海外での評価が高く、
そうした仕事は、海外からの依頼かと思っていましたが、
すべからく自分でそうした仕事を求めて行くという勇気を
私は絶賛しています。
彼がパリで、写真家、そしてそのデザイン応用の個展は
ほとんど国内で宣伝をしていませんが、
私自身、その個展を見てくるつもりです。
幸い、教え子たちにも会えそうです。


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