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『除染されていない間伐材へのデザイン開発』


   


     2月 1st, 2017  Posted 12:00 AM

間伐材という材木があります。
この言葉やその意味が今やあまり知られていないようです。
幸いにして私は子どもの頃、多分小学生時代に知っていました。
それは樹木の生長をコントロールするために、
植林後に間引き伐採する木のことです。
まだ私が小さい頃すでに祖父たちが
間伐する職人が激減していることを聞いていました。
デザイナーになって福井にいる頃には、
福井県のデザインアドバイザーとして、
「間伐材をなんとかデザインでの製品化」を頼まれたものでした。
間伐材そのものの植林からの計画が必要だと思い知ったものです。
したがって、「間伐材とデザイン」の関係は
とても長期期間にわたっての大きなデザインテーマだと思います。
これまでデザインプロジェクトをほとんど見てきましたが、
一時、成功かと思わせますが、
定量的、定質的な事例は皆無と言っていいでしょう。
デザインにとってはとても重大なデザイン対象であるだけに、
ただ単に椅子やら机ではなく全く新しい提案が必要だと考えています。
しかも、この日本列島の森林地帯での間伐材には大きな問題があります。
まず、私が子どもの頃ですら、
伐採出来る職人さんがいなかったのです。今はなおさらです。
さらに大きな問題は、3.11あの原発事故、
後始末としての除染が行われていないことです。
これはそれこそ、直径12~3cmの樹木を切って、
その年輪とともにセシウムが含有されているのです。
いわゆる年輪とセシウムは植物壁に有害物質が入り込んでいることです。
私自身、基幹産業に「セルロース戦略」を掲げているだけに、
特に、福島県から長野県、さらには東京都や静岡県での間伐材、
こうしたセシウム含有への戦略化そのものを、
デザイナーが考え出すべきと考えています。
セシウム134の半減期は2年、セシウム137は30年です。
なんとしても、私はセシウム含有間伐材での
「カーボン戦術」の企画計画に取り組んでいます。

* 『セルロース戦略と炭素戦術が基幹産業になる』
* 『ある効果とある理論を実際に問題解決=デザインへ』
* 『セシウム除染もデザインが深く関与すべきだ』
* 「杉と桐と、そして琴に成る」
* 「環境デザインの難問解決・利益相反設計論」


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「杉と桐と、そして琴に成る」


   


     1月 25th, 2012  Posted 12:00 AM

日本の植林行政での大失敗は杉の木の植林でした。
全国どこでも杉の木はメンテナンスフリーの樹木です。
結果、必ず花粉症に悩まされる国民性を引き込んでしまいました。
さらに、間伐材の問題も生まれました。
間伐材利用のためにデザイン導入も随分と試されましたが
すべからく失敗しています。
これは関与したデザイナーの力量不足だったと指摘しておきます。
そして、桐の木もかつては箪笥素材として日本の代表的樹木でした。
しかし、桐箪笥は着物文化とともに市場は縮小しています。
桐材でのデザイン開発をした経験がありますが、
桐箪笥流通ルートでモダンデザイン流通は困難で失敗しました。
私は杉と桐との伝統的な素材観が失われたことが、
行政の安易な伝統文化への知識無さだと思ってきました。
それを象徴しているのは「琴」、「琴づくり」です。
琴の素材は桐です。
そして伝統楽器である「琴づくり」においては、
杉と桐との育成に伝統技があったことです。
つまり、杉は向日性で真っ直ぐに育ちます。
ところが桐の木の向日性は自由気ままに育ってしまうのです。
そこで、杉林の中で桐の木を育てると、
桐は周囲の杉の木の向日性に支配され真っ直ぐに育つのです。
この桐の習性を利用します。
よく育成した桐の木を伐採して、水に浸けておくと、
桐は本来持っていた曲がりくねる習性が表れてしまいます。
その曲がり具合で楽器・琴にする形態を選び出すのです。
そうして最適カーブをもった桐の木をくりぬいて
琴の音質を決定していくという伝統技です。
私は、杉林の中にある一本の桐の木をイメージすると、
杉林という環境が一本の桐が周囲環境で育成します。
ところが水に浸されて本性である桐の向日性が
出現するということに注目します。
すなわち日本の伝統技には、
素材の本性を自然環境のままに制御する人工技があることです。
私が自然との人工を対比するとき、
自然との調和などは元来ありえず、
むしろ自然をこよなく観察しその自然性の本性性能を、
人間技が徹底して制御運用してきたことが重大だということです。

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