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「越前和紙から名塩和紙への悲しい物語り」


   


     1月 29th, 2012  Posted 12:00 AM

明らかにこの和紙は越前和紙ではなかったのかもしれません。
泥土を漉き込んだ雁皮紙は、兵庫県西宮市名塩の溜漉きです。
これが越前にもあったのかもしれません。
名塩和紙は越前和紙を進化させた溜漉きの雁皮紙です。
この名塩和紙には、伝説がありました。
東山弥右衛門という名塩に越前和紙技術を持ち帰った人物の話です。
名塩には雁皮が山野に群生していました。
彼はこの雁皮が和紙になることを知り、
それを越前に出向いて修行をします。
しかし、和紙づくりは門外不出、言わば産地秘密です。
したがって、彼は養子になり結婚もし妻子を持ちます。
けれども、彼のふるさとである名塩に妻子を置いて帰ってしまいます。
心が引き裂けるゆえさらに紙漉きに没頭し
新たな技術を発見したのかもしれません。
名塩の雁皮紙が越前にも伝わったとき、
妻子は彼を名塩に訪ねていきますが、村人は会わせません。
だから、妻子ともども身を投じたという説、
妻子は癩病=ハンセン病だったゆえ殺されたという説、
四国の遍路さんになって行方不明になる説など、
悲しい話があります。
しかし、名塩千軒と呼ばれるほど、名塩村は発展し、
そのことで顕彰碑が今も残っているほどです。
でも確実に、越前の宮大工図面として
雁皮紙に泥土を漉き込んだ和紙はありました。
そして、復元を申し出たとき、
このような和紙を漉く技法は絶えてしまったこと聞きました。
同様に、漆器でも灰皿は不可能です。
これはタバコ盆に漆を塗り込む技法も絶えました。
伝統工芸の様々な素材に加工技を込めて
進化させてきた技法は随分と消滅しています。
ところが、消滅どころか元々の産地から村八分となったから、
さらに進化を遂げた技法もかなりあります。
また海外にて日本の伝統技が現代、さらに進化を遂げつつある技術、
すなわちイノベーションも多くあります。
こうした消滅した技法・技術、
まだまだ進化している技術を
なんとか確認して語り継ぎたいと思っています。

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