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Posts Tagged ‘製品価値’


『金網越しに道にまで花がある、その製品化と商品化』


   


     5月 4th, 2017  Posted 12:00 AM

1年に1作は一輪挿しを、ということを
自分なりに決めて、ということは、
結局決めておきながら全く商品化までは相当に困難です。
なぜ?困難であったかを反省も込めて、自省してみると、
いくつかの理由があります。
まず、一輪挿しだから、試験管を使うこと。
これは条件とすれば、この試験管を見せるか、隠すか、は簡単なのですが、
素材は出来る限り、新素材をということは自分に課しています。
新素材となると、その素材があっても、
加工・制作・製作は可能ですが、
製造ラインに持って行くことが出来ずに、
制作品・製作品までは一品は可能にすることが出来ます。
ところが、製造から生産に向かわすことがたとえ出来たとしても、
製品は出来たとしても商品化で大きな問題にぶちあたります。
それは、製品価値が市価で満足できるかどうかです。
さらに商品流通・商品販売という商品計画が難しいのです。
だから、私デザインの製品開発は
スケッチブック、図面、モックアップモデルでも終われば幸いということです。
この一輪挿しは、エキスパンドメタルとシリンダーだけゆえに
製品化は出来ても商品化出来なかった作品です。
しかし、このモノ、モノ語りは決定しています。
どこかの家の金網越しに花が道にまではみ出して咲いている。
そういうモノ語り=アフォーダンスはあると思っています。
製造は可能でも生産ラインでというのは難しく商品化ならずでした。
でも私デザインでは製品でもOKの作品なのです。
まずはモノの存在価値では、美しいコトを第一に求めています。
そのことが分かってもらえる企業は現在本当に国内では数少ないと思います。

* チュッパチャプス武器論・結論という展開へ
* 『コンセプト主義からの解放=デザインテクノロジスト』
* 「ボールペンスケッチのためのモレスキン」
* 「手」が創造力の発電装置という話
* 「3Dプリンターの素材と成型精度」


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『資本主義からの逃走』
 「デザインは『付加』するものではないということ・1」


   


     7月 19th, 2010  Posted 12:00 AM

デザイン価値
大企業でのデザイン活動と、
地場産業や伝統工芸産地でのデザイン活動の大きな違いは、
「デザイン価値」の認識です。
国内の大企業は、かえって、「デザイン」によって「付加価値」が上がる、
と単純に思っている所が多いと私は思っています。
つまり、経営者は「デザイン」を装飾程度のものと思い込んでいる人が多い、
これは私の体験です。特に、サラリーマン社長に多いというのが経験値です。
デザイン部門への依頼は「外観・意匠設計」、これは「装飾」にすぎないと考えているのです。
現代、いや最近はますます、この程度の経営者ばかりになっています。
それが日本の「モノづくり」の質、その低下に拍車をかけています。
むしろ、地場産業や伝統工芸産地にとって、
カタカナである「デザイン」は、
その本質を「モノづくり」の根本で語り合えば理解は深まるというのが、
もう一つの私の体験です。
さて、越前打刃物に飛び込んだ私の「伝統」と「刃物」に、
私はデザインを突きつけたことになりました。
それは、デザイン価値を伝統と刃物、
そのモノづくりの根本を革新するというまずは意気込みでした。
この意気込みや覚悟を、職人さん達に理解してもらわなくてはなりませんでした。
ところが、すでに産地活性化は、
「地方活性化政策=国家行政政策」として幾たびか試みられていたのです。
結論は、産地は「デザインに失望」していました。
理由は簡単です。
行政も、デザイナーの高名な先輩たち自身が、
「デザインという付加価値」が欠落しているということで、
製品開発をしても、東京で展覧会をやればそれで「行政指導」なるものは終わりだったのです。この事態は今も改善はされていません。
その結果、「デザイン高度化事業」の成功例は皆無と言っていいでしょう。
その事例をどれだけ多くみてきたことでしょうか。
だから、「デザイン行政」は根本から変革する必要があります。
この戦略は別稿とします。
私は三つの戦略方針を掲げました。
■「伝統」=伝統技や素材に対するデザイン
■「技術」=手づくりの継承に対するデザイン
■「情報」=産地物語に対するデザイン/
これらを統合化すれば、伝統産地の「情報化」と「製品価値」の結合です。
すなわち、これこそ、innovationであり、
伝統産地の物語情報戦略、そのデザインということでした。
すでに30年前の話ですが、
このデザイン手法は、現在も「方向づけ」として正確だと確信しています。
なぜなら、これがデザインの本質だからです。
この本質論は、「モデル化」することができます。
すなわち、「デザイン価値の定義論」だと認識しています。
デザイン価値=脱工業化であり、情報化=物語構造論へ価値論を持ち込むことになります。


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『資本主義からの逃走』
 「*Business Design Modelとしての実証*」


   


     2月 26th, 2010  Posted 1:55 AM

Business Design Model
3月2日に新製品デザインを発表します。
これは、Business Design Modelとして、
その実務実例を製品としてまとめました。
ここでも前述してきました「ビジネスモデル」が、
特に、日本では大きな誤解の中で歪んでしまいました。
もう一度、「ビジネスモデル」の本来の定義にもどります。
まず、「ビジネス」ですから、これは経営=収益構造です。
収益構造によって利益を得ます。
そして、その利益還元を社会化する「モデル」という、
サイクル・円環・スパイラルだったわけです。
したがって、その収益から社会還元は「モデル」となる、
オリジナリティや、知財性からスタートすることです。
ところが、オリジナルな知的発想の独占性が必要でした。
その独占性=知財性は、収益構造になるわけですから、
利益独占性に優位性があるということになったのです。
結果、「社会還元」は無視というか、
経営儲け主義の欲得の中で喪失してしまいました。
ここには、「製品」・「商品」よりも、
「金融」に直結する「モデル価値」で、停止しました。
私は、「金融」の基本である
「製品価値」・「商品価値」に、
不可欠であった「デザイン」の位置が、
全く狂ってきていると判断してきました。
そこには、もう「ブランド」や「商品イメージ」を
超越した方法論が必要だと考えてきました。
まず、「製品」のアイデンティティには、
三つの基盤が必要だということです。
●「製品コンセプト」の強力な訴求性です。
●「製品要素」としての「新素材の性能性」です。
●「製品要因」としての「新実装技術の機能性」です。
こうした三つが「商品化」に向かって、
初めて「企業特色であるモノづくり思想」、
これが「ブランド」を構造化するという思想です。
その「ブランド」には、
基本としての「コンセプト」は、「商品の効能性」です。
これで、もう一度、「ビジネスモデル」のサイクルは、
企業収益から社会還元という美学性と倫理性になります。
これを私は「ビジネス・デザインモデル」として、
デザイン」先導による
ビジネスモデルの再構築をめざしたということです。


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