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Posts Tagged ‘BOP’


「BOPは世界構造の隠喩的病いとなっている」


   


     5月 8th, 2011  Posted 12:00 AM

1949年生まれの私。
当時の世界人口は25億人。
おそらく私は2049年を見ないでしょう。
ここ数年、私自身が世界人口を
追いかけつつ、その増大の速さは不安でした。
年内に70億人、2030年には100億人を突破しているようです。
反してわが国の少子化での人口激減は、
世界構図、世界構造を根本から変えてしまうことは明らかです。
この人口爆発で予想される世界的な問題、
その代表的な問題には、食料・水・エネルギーの構図が見えます。
BOP=Bottom of the Pyramidという人口図式。
三角形に、所得構造分けされた図解です。
私は授業・講演会などで世界構図のビジュアル表現として、
最も多用してきた図解です。
しかし、この図解である図式は、世界隠喩であることも明白です。
それは、人口分類が「所得階層」になっていることです。
スーザン・ソンタグの名著に「隠喩としての病い」があります。
この著作をベースにして、世界構図の隠喩となるのは、
人口爆発である「BOP図式」と「エネルギー」がテーマ可能です。
そして、この現実には世界構造が隠喩的な図解化ができます。
人類の大きな問題が隠喩となって私たちに覆い被さっています。
つまり、人口とエネルギーに現代世界の大問題があります。
現代世界の一つは強欲な人間欲望と、
もう一つは、さらに貪欲な人間社会の階層的な支配構造、
すなわち、国際政治の表象が支配力学になっています。
ところが、本来であれば知性的かつ知識階級である人も、
支配力学の経済的暴力構造の隠喩性からは解放されていません。
しかも厄介なことは、
この隠喩性は「情報」あるいは「情報化操作」によって、
世界構造が閉じ込められているということに他なりません。
この支配構造の中で、人々は対立し共謀し幻想に陥っています。
けれども、人間の誠実さ、「かけがえの無さ」を確信する人には、
決してアポリアにはしない生への希望があるということです。
人口とエネルギーは、まさしく世界概念の隠喩という病なのです。
この病に、デザインは必ずや企望になるはずです。

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12月18日Staff Blog


   


     12月 19th, 2009  Posted 12:15 AM

12月18日

BOSS(川崎和男Kazuo KAWASAKI)は
多摩美術大学の客員教授です。
年に1度は特別講義を行っています。

昨年度の講義
「企業デザインの終焉、
社会的デザインの創生」
tamabi.tvからpodcast
配信されています。

今年の講義は
タイトル「先端デザインの最先端」。

●Design for CLOUD-NETwork Computing
●Product Design / i Phone Application
●PKD(Peace Keeping Design)
●BOP(Bottom of the Pyramid) Business
●CONCEPT Making Method
●Design on Medicine & Technology
の内容で盛りだくさんお話しました。

1年に1度なので、デザイナーの卵たち
話したいことがたくさんあふれるBOSSです。
卒業制作を終えた4年生にも、
デザイナーの先輩として
教授としてメッセージも伝えました。

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『資本主義からの逃走』
 「現代アートの象徴性からデザインでの創生へ」


   


     10月 28th, 2009  Posted 10:38 PM

資本主義の崩壊は、1927年に「予見」されています。
それは、「大恐慌」の2年前のことです。
それから20世紀の戦乱となり、冷戦につながりました。
共産主義・社会主義・資本主義・民主主義という
理念の崩壊は、1970年代からだと私は思っています。
なぜなら、時代変革の「予見」は、経済学・哲学などよりも、
「現代アート」にもっもと端的に、象徴されているから、
感覚、感性で「予見」の正当さを理解できてしまうのです。

その「予見成立」の理由は、単純明快にまとめられます。
ひとつ、「南北問題」、とてもなつかしい言葉です。
ひとつは、「宇宙船地球号」。
もうひとつが、「コンピュータ」です。
ともかくこの三つを置き換えると、

● 先進国と途上国の貧富格差とあらたな民族紛争。
● 地球環境問題、温暖化やCO2やサスティナビリティ。
● パソコンとインターネットでの情報意識社会化。

ということになるでしょう。
二つの現代アートが象徴しています。
まず、地球を象徴化した作品と、
tomas-saraceno・Universes in Universe : Tomas Saraceno

人間の生命を象徴化した作品です。
rafael-lozano-hemmer・Pulse room : Rafael Lozano-Hemmer

地球は、まさしくwebsite=蜘蛛の巣のように、
情報に包み込まれているのです。
包まれているのではなくて、
「包み込まれている」ことにこそ、
時代認識の象徴がある。
その時代認識は、
資本主義と民主主義に包まれているのか、
「包み込まれている」のかということは、
大きな差異があるということになります。

そして、
もう一つの、観客である人間の生命をそのまま、
脈拍を電灯の点滅で具体的に感じ取らせつつ、
空間、それは地球でしょう。
そこでの「自己の存在性」を再認識させる作品です。
私は、この二つの現代アートに具現化されている
「包み込まれている」という認識は、
ただただ、それこそ、Bottom of the Pyramidの
トップゾーンの1億人だけが、現代文化として、
平和に、いや平然と受け入れることが可能です。

結局、
「地球に存在、生きているすべて」の人々が、
認識=包み込まれているわけではありませんから、
そこに、資本主義って?、民主主義って?ということ。

「包み込まれているすべて70億人の認識」には、
決してならないとするなら、
Bottom of the Pyramidの根本や基盤や理念は、
再創生されるべきではないかと私は思います。

私は現代アートの象徴性を読み取りながら、
再創生のデザインがあるべきだと考えているのです。
しかし、哀しいかな、現代アートが示しているのを、
理解し、さらに「予見」できるのは、
トップゾーン1億人の中の、一握りの人たちだけです。


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『資本主義からの逃走』
 「BOP-Businessの前にPKDありきです!」


   


     10月 26th, 2009  Posted 7:00 AM

このところ、私は一般向けの講演会で、
京都神戸大阪で「BOP」=Bottom of the Pyramidを、
私の調査研究、
クリントン財団の取り組みへの参画資料等などで紹介。
ソウルの国際学会でも中心課題として講演しました。

一つは、
「本当にトップゾーンの先進国の富」と
「ボトムゾーンの途上国の貧困や飢餓、感染症、紛争」を
対比して講演しています。

二つ目は、
おそらく、これからはBOP-Businessが、
脚光を浴びるでしょう。
しかし、すでに、BOP-Businessを語り始めている輩に、
何が出来るというのでしょうか。
疑問です。
その最大の理由はBusiness以前の問題があるからです。
それは、「手法」と「運営」が一体化する必要があると、
私は考えているからです。

その「手法」と「運営」を成し遂げられる職能は、
「デザイン」です。
唯一、「デザイン」とまでは言いませんが、
私は、「手法」と「運営」にデザインからの主義主張が
必然だと思っています。
それが、「資本主義からの逃走」であり、
「民主主義への大きな疑問」が下敷きです。

091026bop

そして、
何がBOP-Business周辺から取り組んでいくべきか、
という具体事例をデザインする、
ということが第一ではないかと目論でいるからです。
私は、「BOP」へアプローチするために、
「PKD=Peace-Keeping Design」をまず、提唱し、
その具体的なデザイン開発テーマとデザイン対象を
明確にしてきました。

私は「BOP」と「PKD」を同時進行させることが
最も重大だと思っています。

幸いにして、
「Clinton Global Initiative」のBOP-Project
デザインアドバイザーに就任しています。


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『資本主義からの逃走』
 「BOPの概観からの問題意識」


   


     10月 25th, 2009  Posted 8:00 AM

世界の人口はやがて70億人に向かっています。
ところが、45億人=全人口65%の人は、
年収が3万円から20万円です。
一日の労働対価が、1ドル、2ドルの人々が
45億人いると言ってもいいでしょう。
ところが、ヒエラルキーのトップゾーンに1億人。
この人たちの年収は、最低ラインで200万円。

bop2

日本はやがてこのゾーンから
年収150万円が予想されていますから、
決して、トップゾーンの国家ではなくなりつつあることも
事実として受け止めなければなりません。
「Bottom of the Pyramid」 の中間ゾーンには、
20万円から200万円の年収の人々が、23億人です。
そして、
この人たちに対しての「民主主義」が
政治体制は制度か、どうかは、
はなはだ容認しがたい面があります。
45億人の世界では、
食糧危機・飢餓・水不足・感染症・麻薬・エイズなど、
「生死」そのものに直結した問題があります。
23億人の世界では、もはや「資本主義」では、
ほとんど解決不可能の問題が覆い被さっています。
それなら、
トップゾーン、1億人は「豊かで幸福か」といえば、
決してそうは言えません。
が、このゾーンを特徴づけていたのは、
「資本主義」+「民主主義」だったのですが、
このイデオロギーが、もたらしたのは、
結局、
69億人を犠牲にしたの「富の分配」と「格差」でした。
これは明白な事実です。
敗戦後の日本は、年収20万円でした。
そこから、日本の「資本主義+民主主義」が、
「正当」に正しかったのかどうか、
ということを確認することが問題意識だと、
私は思っています。


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『資本主義からの逃走』
 「Bottom of the Pyramid」


   


     10月 23rd, 2009  Posted 7:44 PM

「地球は丸い」。
私たちは、その球体の上で生活をしています。
そんな私たちを、ヒエラルキー状態に配置できます。
それは年収という尺度です。
ヒエラルキーというのは、「ピラミッド」の形態です。
これを「Bottom of the Pyramid」と呼びます。
そして、このピラミッドを図解すると、
次のようになるわけです。

bottom-of-the-pyramid001

見えてくるのは、
果たして、世界=地球上の人間、
その生活、すなわち「収入」による
「ヒエラルキーの構造」です。
やがて、70億人と言われて、
秒数毎に人口は増加する一方です。
「地球環境」と「経済的環境」の見事なピラミッドを
「Bottom of the Pyramid」と呼び、
すでに、私たち日本人は、1億人の中に居ますが、
結局、
先進国家は、「資本主義そのもの」
あるいは「民主主義」も、
この100億人が世界であったというだけのことであり、
69億人が、この地球上に生きている、ということを
先進国家は、すっかりと
忘れていることにあらためて気づかなければなりません。


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『資本主義からの逃走』
 *ひととき・韓国だより2*
 「IASDR2009でのキーノートスピーチを終えて・・・」


   


     10月 21st, 2009  Posted 9:57 PM

明日帰国します。
IASDR2009でのキーノートスピーチを、
ぴったし1時間の英語プレゼ、
時間を気にして、
相当に早口になったりでしたが終えました。

091021iasdr2009presen

まず、なんといっても久々の韓国でしたが、
日本より、ともかく勢いがありました。
そして、
「世界デザイン首都宣言ソウル」を標榜されているだけに、
このコンファレンスの企画から運営を、
果たして現在の日本、
そのデザイン学系学界にできるかと言われれば、
そのエネルギー不足を肌身で感じてしまいました。
だから私の役目として、
ともかく人工心臓がデザイン対象であるとか、
BOP=Bottom of the Pyramidによる、
70億人のデザインのあり方や、
私の提唱するPKD=Peace-Keeping Desig
教育プログラムの論理的骨子を
2画面と音楽、ムービーでプレゼンテーションしました。
世界40数カ国からデザイン系大学の参加者があり、
相当に名刺交換をしました。
思いがけない出会いで驚いたりでした。
親友だったNASAのデザイナー、
故マイケル・カリルのスタッフが、
東大で学位を取得後、母校で教授になっていました。
私は、「ユニバーサルデザイン」を提唱したのは、
マイケル・カリルだと確信しています。

ともかくひたすら、
資本主義」は
BOPのトップゾーン100億人の基盤でしかなかったことを
最も強調できたと思います。
私を世界にアピールするには、
サラ・ペイリン副大統領候補のメガネ」であり、
韓国ゆえに、「ヨン様もかけているメガネ」で、
会場を和ますことが出来たようです。


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『資本主義からの逃走』
 *ひととき・韓国だより*


   


     10月 20th, 2009  Posted 9:55 AM

今、このブログをソウルにて書いています。
国際デザインリサーチ学会にて、
キーノートスピーチをします。
タイトルは、
「先端的インクルーシブデザインによるBOP」です。
アブストラクトでは、
すでに、「資本主義は終焉した」ということから
BOP=Bottom of the Pyramidへの
デザインを語ります。

091020iasdr2009

そして、韓国に入ってから、
プレゼンテーションの画面づくりに入っています。
私は、講演や講義の前夜に
準備画面を作成するのが習慣になってしまいました。
私は、常に2画面を使います。
それも必ず、16:9サイズにします。
ところが残念なことに、
世界中が未だに4:3のスクリーンなので困ります。
それでも「わがまま」を講演の場合には、
16:9画面それも2画面のスクリーンを
用意していただくことを条件にしています。
メイン画面は私自身が作成しますが、
サブ画面はスタッフが
メインの画面にシンクロさせて作成します。
最大は、正面に2画面で左右や天井などで6画面、
しかも、PinP機材や音響システムも持ち込みます。
私のwebsiteで、講演スタイルをご確認してください。
この韓国での国際学会も
16:9で2画面と音響システムを駆使するつもりです。
音楽は、ここ当分は、
マイケルジャクソンの曲を使用するので、
JASRACに許諾許可は申請してありますが、
「学会使用の場合」は著作権は除外対象です。
帰国したらまたいくつかの講演が待っています。
私は、デザイナーの表現形式に、
「講演」という形式があり、
その「内容の形式」もデザインすべきだと考えています。
さらに、「講演のデザイン」として、
ムービーや、音響、画面サイズ、PinPなどで
そのデザインを創出すべきだと言い続けています。


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